
「魚の皮が革になるの?」と思う方も多いかもしれません。
フィッシュレザーとは、魚の皮を鞣し(なめし)などの加工によって、革素材として生まれ変わらせたものです。
魚の皮ならではの美しい鱗模様や、一枚ごとに異なる表情が大きな特徴。普段は廃棄されることもある魚の皮を、新たな素材として活用できることから、近年注目されているレザーの一つです。
この記事では、フィッシュレザーとは何か、どのように作られるのか、魚臭くないのか、強度や耐久性はどうなのか、どんな魚から作られるのか、どんな製品に使われるのかまで、フィッシュレザーの開発に取り組むSanriku Leatherの視点から紹介します。
フィッシュレザーとは?

フィッシュレザーは、魚の皮を加工してつくられる革です。
魚を食用に加工する際、皮は食材として利用されず廃棄されることがあります。その魚の皮を原料として、余分な身や脂を取り除き、鞣しや染色、加脂、乾燥、仕上げなどの工程を重ねることで、革素材として利用できる状態に加工します。
一般的な革と同じように、財布や名刺入れ、バッグなどの革小物に使用することができます。一方で、牛革や豚革などとは異なる魚ならではの表情を持っていることが、フィッシュレザーの大きな魅力です。
特に特徴的なのが、魚の種類によって異なる鱗模様です。鱗の大きさや形、並び方によって表情が大きく変わるため、同じ魚種でも一枚ごとに異なる個性があります。
フィッシュレザーはどうやって作る?

魚の皮は、そのままでは革として使うことができません。
生の皮には水分や脂、身などが残っているため、まずは皮の状態を整えるところから始まります。そこから、不要なものを取り除き、鞣しや加脂、乾燥、染色、仕上げなど、さまざまな工程を重ねながら少しずつ革へと変えていきます。
革づくりでは、魚種や皮の状態、目指す革の質感などによって、必要な処理や加工条件が変わります。特に魚の皮は、牛革などとは異なる性質を持っているため、魚皮に適した加工方法を見つけることが重要です。
Sanriku Leatherでは、サクラマスの皮を素材として、強度や柔軟性、耐久性などを考慮しながら、より使いやすく、魚皮の個性を活かした革に仕上げるための研究・試作を進めています。
一枚の魚皮が、さまざまな工程を経て革へと変わっていく。
その過程も、フィッシュレザーの魅力の一つです。
フィッシュレザーは魚臭くない?

フィッシュレザーについて、特に気になるのが「魚だから臭いんじゃないの?」という疑問です。
結論からいうと、適切に加工されたフィッシュレザーは、生魚のような強い魚臭さが残るものではありません。
魚の皮には、身や脂などが残っています。そのため、製造工程ではまず皮に残った身や脂を取り除き、必要な処理を行います。さらに、工程の中でしっかりと乾燥させることで、水分とともに残った臭いも飛ばしていきます。
これはフィッシュレザー特有のことではありません。
例えば牛革も、完成した革から牛そのものの匂いがするわけではありません。それと同じように、魚の皮も適切な加工を重ねることで、生魚のような匂いではなく、革素材としての匂いになっていきます。
もちろん、使用する魚種や加工方法、乾燥状態などによって、仕上がった革の匂いには違いがあります。
Sanriku Leatherでは、単に魚臭さを抑えるだけではなく、魚特有の生臭さをできる限りなくすことを目指しています。
身や脂を丁寧に取り除き、鞣しや加工、乾燥など一つひとつの工程を見直しながら、魚の皮が持つ個性的な表情や鱗模様は活かしつつ、匂いについては気にならないレベルまで仕上げることを目標としています。
「魚の皮だから、魚臭い。」
そうとは限りません。
魚の個性は残し、魚臭さは残さない。
それも、Sanriku Leatherが目指しているフィッシュレザーです。
フィッシュレザーは丈夫?

「魚の皮って薄いけど、革として使えるの?」という疑問もよくあります。
フィッシュレザーは魚種や部位、皮の厚み、鞣し・仕上げ条件によって性質が変わるため、すべてのフィッシュレザーを一括して「牛革より強い」「弱い」と言うことはできません。
一方で、魚の皮には独特の繊維構造があり、薄さから想像するよりも強度を持つものがあります。
Sanriku Leatherでは、感覚だけで「丈夫」と判断するのではなく、今後、引張強度などの試験によって実際の性能を確認していくことを目指しています。
フィッシュレザーを「珍しい革」で終わらせず、素材としてどこまで性能を高められるか。それもSanriku Leatherが取り組んでいるテーマの一つです。
フィッシュレザーの特徴
1.魚ならではの鱗模様

フィッシュレザー最大の特徴ともいえるのが、魚の種類によって異なる鱗模様です。
同じ魚種でも一枚ごとに模様や形が異なり、天然素材ならではの個体差があります。革の表面に残る鱗の凹凸は、フィッシュレザーならではの独特な表情をつくります。
牛革などでは見ることのできない、魚そのものの姿を感じられる素材です。
2.薄さを活かせる

魚の皮は、一般的な大型哺乳類の皮に比べて薄いものが多く、フィッシュレザーも薄さを活かした製品に向いています。
ただし、厚みは魚種や部位によって異なります。そのため、実際の素材として使用する場合には、魚種ごとの特徴を理解することが重要です。
3.一枚ごとに表情が違う

天然の魚からつくられるため、すべての革が同じではありません。
鱗の大きさ、形、傷、シワ、色、厚みなど、一枚ごとに違いがあります。
工業製品のような均一さではなく、天然素材だからこその個体差を楽しめるのもフィッシュレザーの魅力です。
4.魚種によって特徴が変わる

フィッシュレザーは「魚の革」という一つのカテゴリーですが、魚種が変われば革の表情も変わります。
鱗の大きさや形、皮の厚み、繊維構造などが異なるため、仕上がった革の印象も変わります。
つまり、魚種そのものが革の個性になる。
これもフィッシュレザーならではの面白さです。
どんな魚からフィッシュレザーがつくられる?

フィッシュレザーは、特定の一種類の魚だけからつくられるものではありません。
サケ・マス類をはじめ、タイ、ブリ、シイラ、スズキなど、さまざまな魚の皮がフィッシュレザーの原料として利用されています。
魚種が変われば、鱗の模様や大きさ、厚み、質感なども変わります。
そのため、フィッシュレザーは「魚の皮を革にする」というだけではなく、魚種ごとの特徴をどう革として活かすかという面白さがあります。
フィッシュレザーは何に使われる?

フィッシュレザーは、一般的な革と同じようにさまざまな製品への利用が考えられます。
例えば、名刺入れ、コインケース、財布、カードケース、キーケース、バッグ、アクセサリーなどの革小物です。
魚の鱗模様そのものがデザインになるため、素材の表情を活かした革小物との相性が良いのも特徴です。
Sanriku Leatherでも、まずは名刺入れやコインケースなどの小物から、フィッシュレザーの製品化を進めています。
フィッシュレザーはサステナブルな素材?

フィッシュレザーは、食用として利用された魚の皮を、捨てずに革として活用する素材です。
本来なら廃棄される魚皮を活用することで、廃棄に伴うCO₂や環境負荷を減らすことにつながります。
ただし、革への加工にも水や薬品、エネルギーなどが必要です。
そのためSanriku Leatherでは、植物タンニンを使うなど、加工時の環境負荷にも配慮しながら革づくりを進めています。
Sanriku Leatherがサクラマスから始める理由

Sanriku Leatherが最初の素材として選んだのが、サクラマスです。
岩手県釜石市では「釜石はまゆりサクラマス」の養殖が行われており、サクラマスの養殖生産量は日本一を誇ります。
釜石発祥のブランドだからこそ、まずは地元を代表する魚から始めたい。
そして、三陸の水産資源の魅力を、革という新しい形でも伝えていきたい。
その第一歩が、サクラマスの皮をフィッシュレザーにすることです。
魚を育てる。食べる。そして、残った皮を革にする。
魚を食べて終わりではなく、その先にもう一つの価値をつくる。
それがSanriku Leatherの目指すフィッシュレザーです。
Sanriku Leatherのフィッシュレザー

Sanriku Leatherは、岩手県釜石市を拠点に、三陸の魚皮を革素材へと生まれ変わらせることを目指しています。
現在はサクラマスを中心に、魚皮の下処理から鞣し、染色、加脂、仕上げまで、製品化に向けた研究・試作を進めています。
フィッシュレザーには、まだまだ研究すべきことがあります。
どのような鞣し条件が適しているのか。どうすれば強度や柔軟性を高められるのか。どのような仕上げなら、魚の鱗模様を活かしながら使いやすい革になるのか。
一つひとつの条件を試しながら、「魚の皮だからこそ生まれる革」をつくることを目指しています。
まとめ|フィッシュレザーは「魚の皮」から生まれる革

フィッシュレザーとは、魚の皮を鞣しなどの加工によって革素材へと生まれ変わらせたものです。
特徴をまとめると、
- 魚の皮を原料とする革
- 魚種によって異なる鱗模様を持つ
- 薄さを活かした製品づくりができる
- 一枚ごとに異なる天然素材ならではの表情がある
- 適切に加工することで魚特有の臭いを抑えられる
- 魚種や加工条件によって性質が変わる
- 財布や名刺入れなど、さまざまな革小物に利用できる
- 魚皮の廃棄に伴うCO₂や環境負荷の低減につなげられる
そして、フィッシュレザーの面白さは、単に「魚の皮を革にすること」ではありません。
魚種ごとの個性をどう活かし、どんな素材に仕上げるのか。
そこに、フィッシュレザーならではの奥深さがあります。
Sanriku Leatherは、三陸の海から生まれる魚皮に新しい価値を与え、これまでにない革素材をつくることに挑戦しています。
これから、実際の製造工程や研究・試作の様子も紹介していきます。
三陸の海から、革をつくる。
それが、Sanriku Leatherの挑戦です。
